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Channel: 腱鞘炎(ジストニア)日記
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エンリケ・サンフェリュー修理完了

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戻って来ました。

修理箇所は、、、、

表面板の割れ2カ所
表面板の剥がれ1カ所
表面板センター割れ修理跡再接着
表面板縁取り隙間
裏板バインディング剥がれ
ナット・サドル新規作成

そして糸巻き交換



フステロのエステソタイプです。
この古風な糸巻きならば見た目粗大ゴミのサンフェリューにも似合うはずです。

結果



良いなあ。
むっちゃ良いです。
〇トーの安っぽいピカピカのラッカー吹き付け糸巻きと違い、なんともいえない手作り感満載の味わいがあります。
操作性も悪くありません。
ロジャースの様なスムーズさはありませんが、合わせたい所でピタっと止ってくれます。




修理の結果、音が引き締まり素晴らしいギターに変身して戻って来ました。
修理前のこのギターの魅力がさらに増して戻って来ました。

オールドらしい太く深い音色と響きはそのままに、音が引き締まりさらに力強い鳴りが加わりました。
音量も増しましています。
弾き心地も増しています。

柔らかく素直で躍動感あふれる弦の感触です。
軽いタッチでも敏感に反応してくれます。
強いタッチにも負ける事がありません。


さすがエンリケ・サンフェリューです。
エンリケ・ガルシアの弟子、フランシスコ・シンプリシオの兄弟弟子です。
単に汚い古いだけのギターでは無かったです。



Enriqe Sanfeliu Junior 1939とJuan Miguel Gonzalezさんのトーレスレプリカの音

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見た目はミイラ化した死骸みたいですが、まだまだ現役バリバリのギターです。

エンリケ・サンフェリュー(Enriqe Sanfeliu Junior 1939)の演奏動画を撮ってみました。
Zoom Q4nで撮って音の加工は一切していません

Enriqe Sanfeliu Junior 1939


おおらかに豪快に鳴っています。
さすがに音質・音色はオールドなので、弾く曲は限定されますが、好ましいギターです。


もう1台ホアン・ミゲル・ゴンザレスさんのトーレスレプリカ(Juan Miguel Gonzalez 2017)











去年の秋頃に楽器屋さんで初めて試奏して、それ以来ずっと手に入れるかどうか悩んでいました。
値段も高かったし、、、、
音と響きは凄く気に入っていたのですが、何故か弾きこなせない。
右の首から肩にかけて嫌な感触が走り、右指がもつれて弾けなくなってしまいます。
バルベロ・イーホと長沢仁美の2台が委託で売れて、楽器屋さんで安くしてもらって出費ゼロで手に入れる事になり、「弾きこなせなくても買っちゃえ!!!」と決心。
家に持ち帰ってからテンションの低めの弦に張り変えたら普通に弾ける様になりました。
逆に弾き心地が良くて弾きやすい!!!

こちらも演奏動画です。
デッドストック状態だった楽器のため、まだまだ鳴りきっていませんが、それでも中々心地良い音色が出ています。
比較のためにサンフェリューと同じ曲です。

guitar by Juan Miguel Gonzalez



さすが現代の楽器だけあって、バランス良く弱点がありません。
心地良い音色ですが、これならどんな曲を弾いても大丈夫です。

老後の楽しみにちょうど良いギターを、続けて手に入れる事が出来ました。
2台手放しているから台数も増えていないし。。。。

「いつかはシンプリシオ」なんて思っていたけど

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フランシスコ・シンプリシオのギターって、私にとって一つの理想型のギターなんですよお。
で、「いつかはシンプリシオを手に入れよう」なんて思っていた時期があります。

何で手に入れなかったのか?
理由は簡単です。
値段が高くて買えなかったのです。

それでも「いつかはトーレス」とか「いつかはブーシェ」なんて気持ちに比べれば、シンプリシオの方が現実的です。
例えば所有しているギターの中でも、最近メインに使っている3台。
フレドリッシュとミゲル・ゴンザレスとサンフェリュー
この3台の購入価格(+修理代等)でシンプリシオの最高に状態の良い物が手に入ります。
要は定年退職前でお仕事をちゃんとしていた時期であれば、ごちゃごちゃとギターを売ったり買ったりせずに、シンプリシオ1台に絞ってローンで買ってしまえば買えたのですよねえ。

何故、シンプリシオに絞って購入しなかったのか?

それはシンプリシオ1台だと満足出来ないことを自分で分かっていましたからねえ。
シンプリシオ1台よりもフレドリッシュとミゲル・ゴンザレスとサンフェリューの3台を弾いていた方が楽しい!!!

でもやっぱりシンプリシオは憧れのギターなんですよねえ。

そんな訳で、、、、(←どんな訳でしょうかねえ?)
こんなギターが現在ドイツから中継点のアメリカへ向かっています。
日本への到着は11月の中旬頃かなあ????




アホですねえ。
エンリケ・サンフェリュー・ジュニアと同じパターンです。
夜中に酔っ払ってポチっとしました。





ミゲル・シンプリシオ
F.シンプリシオと一緒にギターを作っていた甥っ子です。
F.シンプリシオの死後にも少しだけF.シンプリシオのギターを一人で作っていました。

何故かギターの歴史から忘れ去られたミゲル・シンプリシオのギター。
どんなギターなのか?
なんだか面白いんですよねえ。


Schubert Variations by F. Rebay on a 1934 M. Simplicio guitar – Lorenzo Micheli


1934年のミゲル・シンプリシオは見た目も音もF,シンプリシオと区別がつきません。

私が夜中に酔っ払って楽しくなってしまってポチっとしたのは1969年のギターです。
作られた時期はギターが大型化していく時代。
F.シンプリシオの死後40年近く経っています。
ここまでのシンプリシオっぽさは期待薄です。

シリアルナンバーは132

F.シンプリシオと一緒にギターを作り始めたのは1920年代でしょうから、このギターを作った時はたぶん還暦超えなのでは?
情報がなさ過ぎてM.シンプリシオが何年までギターを作っていたか分かりませんが、生涯製作本数は150本以下だろうと思います。
ムッチャ少ない。
製作本数が少なくて、当時の有名ギタリストが使用していなくて、時代はギターにパワーを求め始めていた。
それで忘れられた存在になっていったのか?
あるいは単にギター自体が、たいした事無かったのか??
どっちなんだろう。




美しいロゼッタ
叔父さんの様に豪華絢爛な口輪ではありませんが、地味ながら手の込んだセンスの良いデザインです。




ヘッドの埋木細工のこのセンスはどうなんだろう?
実物を見てみないと何とも言えませんが、格好悪い気がする。
まあ凄く特徴的で目立つから良いか、、、、




鮑???
う~~~みゅうう。。。。
これもちょっと、、、、




裏・側板はコテコテの板目
ローズウッドで良いから柾目の方が好きなんですけどねえ。




糸巻きはオリジナルでは無く新しい物に交換されています。
写真で見る限りチープだよなあ。
安物のガタガタの物が付いていたら、交換する事になりそうですねえ。


そして一番問題なのがこれ!!!




ありえない位汚い修理が施されています。
素人の細工なのかなあ???
それでもこの前のサンフェリュー・ジュニアの汚さに比べればまだましか。。。



委託販売に出していたギターが1台売れて、もう1台が売れそうになっていて、この2台の代金がミゲル・シンプリシオの購入価格+修理代となる予定です。
新たな出費も無く、ギターも1台減るしで、自分への言い訳も十分にあります。


情報がない分、サンフェリュー・ジュニアの時以上に到着が楽しみです。

シンプリシオはシンプリシオで無かった

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ダ~~~ン!!!!



とうとう到着です。

夜中に酔っ払って楽しくなってしまってポチっとしてから、12日後にドイツから到着です。
今回はサンフェリューの時よりもかなり早い到着です。



ミゲル・シンプリシオ




フランシスコ・シンプリシオの甥っ子で、叔父さんと一緒にフランシスコ・シンプリシオのギターを作っていた人です。
そのミゲル・シンプリシオが1969年に作ったギターです。


さっそく梱包の解体作業に取りかかります。




オリジナルケースが激渋!!!



内部にはM.S.Sinplicioの名が記されています。
これは良いですねえ。


そしてギターの状態は!!!



あれ????
何だか想像していたのと違うなあ、、、、





適当な修理をちょこっとだけ施したボロボロの粗大ゴミみたいなギターが到着すると思っていたのに、ケースに入っていたのはピッカピカのギターです。
ビカビカに再塗装されてしまっています。
表面板センターの修理跡が無ければ、出来たての新品のギターみたいです。




裏板もピッカピカです。




美しい美しい口輪
写真よりも実物の方がより美しい




1920年代のF.シンプリシオへのオマージュ???
ヘッドの埋木細工も実物は色合いが落ち着いていて良い感じですね。
これはこれでアリです。




ブリッジの鮑も実物は目立ち過ぎずに良い色合いです。


弦を張り替える時に内部を撮影。




60年代のニューコンセプト??
ブーシェベース???
では無いか、、、、

F.シンプリシオでは無い!!!

サウンドホール下に2本のごつい横力木
その下にほとんど平行な9本ファンブレーシング
エンドに逆ハの字
そしてブリッジ下のトラベルスバー?
真ん中の力木が貫通する小さな力木?
そのエンドにもうひとつ

1920~30年代にF.シンプリシオの下で作っていたギターとは別物です。
フレタ・エ・イーホスやラミレス3世等の様に、大きなコンサートホールでも負けない力強い音を模索した結果なんでしょうねえ。
色々とやってみてたどり着いたガチガチの表面板。
ギターの重量もそれなりにあります。


それはそれとして、、、

裏板のエンドブロック辺りに写っている白い物は何????
蛾の繭?
巨大化した黴の塊??
修理した時に取り忘れた綿????
バルセロナで流行った何かの呪いの儀式の跡????

何だか不気味なんですけど。


サウンドホールから小さなハタキを突っ込んでパタパタしたけど取れないですう。
裏板にがっつりとくっついてます。
修理・調整で山本さんの所へ持っていった時にでも取ってもらおうかな?

昔、ブエノスアイレスから取り寄せたヌニェス1世の中から、巨大なスズメバチの死骸が出てきた事はあったなあ、、、、


弦も張り替えたし、さっそく弾いてみます。

お~~~パワフルだあ!!
シンプリシオでは無いいいいいいいいいいいい!!!!

高音は太く丸い心地良い音色。
低音はやや腰高ですがパワフルな太い音がドカンドカンと出ます。
弦の感触は上から下まで重くて柔らかい。
70年代スパニッシュの感触。
やや大味だけどひたすらパワフルです。
体育会系筋肉質ギター。
弾きこなすのはちょっと大変か?
でも反応が素直なので弾きづらくは無いです。
音色も含めて弾き心地は良いです。


まだ楽器が眠っているせいもありますが、再塗装の影響で反応が鈍いですね。
弾き込んで楽器が目覚めて、塗膜が振動になじんでくると大化けする予感がします。
サドルとナットも良くないかなあ?


そしてこれはアウト



ゴトーの安物の糸巻きに交換されてしまっています。 
量産ギター用の物です。
調弦は問題無く出来ますが、ガタガタです。
見た目も悲しいですし調弦が楽しくない!!!
音にも影響が出ていると思います。
コリは交換ですね。

奮発してロジャースにしちゃおうかな?
このギターには音の事も含めて、ロジャースが一番良いと思う。

糸巻きを手に入れたら、いつもの様に山本さんも所で修理・調整をお願いする予定です。


まだまだ楽しみは続きます。

ロジャースはやっぱり凄かった

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ミゲル・シンプリシオの頭にはチープなゴトーの糸巻きが付いていました。
新品なのにガタガタです。





コリはダミですなあ。
どうしてこんなに悲しいビジュアルのマシンが作れるのだろうか??
ガタガタはガタガタなりに調弦は出来ますが、操作性も不快なんですよねえ。
音にも悪い影響が出てしまっている気がします。


ここまで酷いマシンが付いていると、何の迷いも無く交換に踏み切れます。
そこそこ味のある古い糸巻きが付いていたりすると、そのまま我慢して使い続けたりしてします。


一刻も早く交換してしまいたい!!!


交換しました。





美しい!!!!
調弦しようと視線を糸巻きへ向けた瞬間に、幸せを感じるくらい美しいです。

ロジャースのマシンです。

真鍮のプレートは適度にマットで自然な輝きが素晴らしい材質感です。
ボタンはあえて高級感のある素材を避けてスネークウッドにしました。
このボタンのつまみ心地がとてつもなく良いのです。(←アホな感想)

ギター側に問題があって1弦の軸に無理な負担が掛かっています。
これは山本さんの工房で直してもらいます。
それ以外はスーと回ってピタっと止るロジャース独特の使い心地です。
調弦が快楽に変わる?


そして糸巻きをロジャースに替えただけで、楽器が激変しました。

反応が良くなって簡単に音が出るように変わった!!!!
軽く弦に触れただけでピアニシモが出せます。
弾き心地も良くなっています。
高音の歪んだ音も無くなりました。

ロジャースってやっぱり凄いです。
値段が高いだけの事はあります。

ミゲル・シンプリシオ追跡「驚愕!!ミゲル・シンプリシオは二人いた??」

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今月初めにドイツのショップから到着したミゲル・シンプリシオ



20世紀初頭の名工フランシスコ・シンプリシオの甥が1969年に作ったギターです。



ラベルには誇らしげに「Miguel S.Simplicio Sobrino de Francisco Simplicio」と記されています。


でもF.シンプリシオの面影の全くないギターかなあ?

ボディも大きく重たい楽器です。
重量は1.7Kg位あります。


内部構造も





60年代のニューコンセプトギター?


弾き心地もやや大味でおおらか、70年代スパニッシュの感触。
ウルフの位置はやや高めでパワフルに鳴るギターです。
音色は太く柔らかい音で少しこもった様な音。
F.シンプリシオの様に引き締まった音がコツンコツンと鳴る楽器では無く、豪快にボコンボコンと鳴る感じです。


不思議な魅力のあるギターです。


F.シンプリシオは有名ですが、その後継者ミゲル・シンプリシオに関しては現在ほとんど知られていません。
私もこのギターを見つけるまでは知りませんでした。


ギターの歴史から忘れ去られているF.シンプリシオの甥「ミゲル・シンプリシオ」
1969年の段階ではギターを作っていたはずなのに、情報量が少なすぎです。
いつ頃までギターを作っていたのかも分かりません。


ラベルにあった工房の住所をグーグルマップで検索してみたら



綺麗な公園になっていました。


ちなみにフランシスコ・シンプリシオの工房はたぶんここです。



もの凄いアールヌーボーな建物です。
工房の場所でも格の違いを見せつけられます。

ミゲル・シンプリシオはフランシスコ・シンプリシオの工房を引き継いだはずですが、途中で移転したのでしょうか?




ミゲル・シンプリシオの事を色々と調べてみました。




ネットで見つけたフランシスコ・シンプリシオと一緒に写るミゲル・シンプリシオの写真。
この写真の載っていたHPにとんでもない事が書いてありました!!!
びっくりです。

「フランシスコ・シンプリシオの息子ミゲル・シンプリシオは1899年に生まれ、父親とエンリケ・ガルシアの両方の訓練を受けました。彼の父親の人生の間、彼らは密接に一緒に働いた。父親の死後、彼は彼のワークショップを引き継ぎ、すぐにラテンアメリカで国際的な評判を得ました。彼の生涯の間に、彼のギターはアルゼンチンで素晴らしい価格で販売されました。彼は彼自身のレーベルの下で約150のギターの生産で信用されているが、彼は彼の父親の生産の多くを手にしたようです。1938年に39歳で胃がんで亡くなりました。彼はフアン・フェノイを訓練した。」

色々とビックリですが、一番驚かされたのがミゲル・シンプリシオは1938年に39歳で胃がんで死んでいるって事です。
って事はどういう事???
私のギターをミゲル・シンプリシオは死んでから31年も経ってから作ったって事???
ほとんどオカルトですなあ。

もう1つ気になるのが、ミゲル・シンプリシオはフランシスコ・シンプリシオの息子だったって事です。
ネットで色々と調べたりしても、他の情報源でもミゲル・シンプリシオは甥では無く息子とされています。

でも私のギターのラベルには「Sobrino de Francisco Simplicio」とはっきりと書かれています。
イーホ(息子)では無くソブリーノ(甥)なのです。

これってどういう事????


フランシスコ・シンプリシオが1932年に亡くなってから、たった6年間で約150台のギターを作ったって記載も気になります。


弟子のファン・フェノイ(Juan Fenoy)の事も気になって調べてみました。
ほとんど情報無しです。

見つかった情報は、ミゲル・シンプリシオの唯一の弟子と称していた事と「悪意の無いトーレスの贋作」を作り修理者として自分のラベルを貼っていたエピソードだけです。


ミゲル・シンプリシオはあまりに情報が無いので、フランシスコ・シンプリシオの事も調べてみました。

1874年10月18日に生まれ、若い頃18年間家具職人として働いた後、エンリケ・ガルシアの工房でギターを作り始めます。
エンリケ・ガルシアが1923年の11月に死亡した後、工房を引き継ぎます。
1932年1月14日に死亡するまで約340台のギターを作っています。
フランシスコ・シンプリシオは息子のミゲル・シンプリシオと一緒にギターを作り、工房では娘のヨセファ( Josefa)が手伝いをしていた。



写真はF.シンプリシオと娘のヨセファです。



もう一人エンリケ・コル(Enrique Coll)(1894-1978)という弟子がいた。



Bertram Burkert plays O Magnum Mysterium by Francis Poulenc on a 1931 Enrique Coll


フランシスコ・シンプリシオ存命中の1931年に作られたエンリケ・コルのギター
美しい音のギターです。

この人もネットで検索しても、ほとんど情報がありません。
1978年まで生きていたのに現存するギターの情報もほとんどありません。
動画の1台の他は40年代に作られたギター1台ヒットするだけです。
これだけ美しい音のギターが作れる名工が、その後1台しかギターを作っていないって事もあまり考えられません。

娘のヨセファもその後のギター史にはまったく登場していません。



それからシンプリシオのギターがガルシアの死後たった8年で340台も作られている事も驚きです。
装飾は外注だったとしても凄い台数です。


たぶんこういう事なのかと思います。

フランシスコ・シンプリシオの美しく繊細なギターは、名工が一人でゆっくりじっくりと作っていた訳では無く、実際は数人の職人で分業して作っていたのでしょう。
ミゲル・シンプリシオとエンリケ・コルの二人の職人とお手伝いの娘ヨゼファとフランシスコ・シンプリシオ本人の4人体制で作っていたのであれば、年間40台以上作り続ける事も可能です。
そしてフランシスコ・シンプリシオの死後、ファン・フェノイが加わった4人体制で「ミゲル・シンプリシオ」のギターを作っていれば、6年間で150台の製作も可能です。


ミゲル・シンプリシオが忘れられた存在になってしまった理由はこんな所か?

①工房を引き継いでからたった6年で突然ミゲル・シンプリシオが胃癌で死んでしまったため製作していた期間が短い事。
②150台程度しかギターが作られなかった事。
③作られたギターの多くが当時裕福だったブエノスアイレスへ輸出された事。
④残されたギターは「シンプリシオ」として大切に扱われ、わざわざ「ミゲル・シンプリシオ」の名前が出されない事。


エンリケ・コルもファン・フェノイも独立せずにミゲル・シンプリシオのギターを作っていたため知られざる名工になってしまった。

そしてミゲル・シンプリシオの死後工房は閉じられたのでしょう。


Schubert Variations by F. Rebay on a 1934 M. Simplicio guitar – Lorenzo Micheli


ミゲル・シンプリシオ存命中1934年に作られたギター。
ラベルは「Miguel S.Simplicio Sobrino de Francisco Simplicio」ラベルでは無く。フランシスコ・シンプリシオの時代の物とほとんど同じに見えます。
音もほとんどフランシスコ・シンプリシオと変わりません。


さて、ここからは想像では無く妄想です。

フランシスコ・シンプリシオの親族には息子の他にもう一人ミゲル・シンプリシオがいた!!!

自称?フランシスコ・シンプリシオの甥のミゲル・S.シンプリシオです。

このミゲル・シンプリシオはもしかしたらギターを作る職人では無かったかも知れません。
ミゲル・シンプリシオの工房が閉鎖されてから短くない年月が過ぎた頃、ミゲル・S.シンプリシオは突然にバルセロナのAgustina Saragossaに工房を再開してしまいます。
ギター製作を担当したのはエンリケ・コルかファン・フェノイ。
希望的観測です。
シンプリシオとまったく関係の無い職人がギターを作っていた可能性もあります。
いずれにしても良い職人だった事は残されたギターで分かります。
ラベルには堂々と「Miguel S.Simplicio Sobrino de Francisco Simplicio」記され、フランシスコ・シンプリシオのギターを熱望していた一部の人達に歓迎されました。
しかしその頃はすでにフランシスコ・シンプリシオの設計を元に作られていたギターが、時代に合わなくなっていました。
60年代のフレタやラミレス3世といったライバル達に対抗し、ミゲル・シンプリシオのギターは大型化し重量が増し、反応の鈍い大味なギターに変わっていき、評判はさらに落ちていきます。
そうして60年代の末(又は70年代初め)工房は閉鎖されミゲル・シンプリシオの名は再び忘れ去られた存在になった。
作られたのはラベルにフランシスコ・シンプリシオの名が記された140台弱のギター。
それもフランシスコ・シンプリシオのギターの様に大切に扱われる事無く、ほとんどが楽器としての寿命を終えていった。

そう考えると、「Miguel S.Simplicio Sobrino de Francisco Simplicio」のギターの謎がしっくりと解けてしまいます。
現存するギターが60年代に集中している事も説明がついてしまいます。

何だか面白くなって色々と調べたり妄想したりしてしまいいました。
正体不明の変なギターを手に入れると、調べ物をする楽しみも付いてきて良いのです。



ちょっと早めの今年の振り返り2021

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少し早いのですが、どーでも良い今年の振り返りです。

今年の振り返りその①

あれから2年間
また生き延びる事が出来ました。
ヨカッタヨカッタ


今年の振り返りその②

還暦を迎えた
「おっさん」から「じいさん」に変容した。


今年の振り返りその③

定年退職して無職・無収入になった。
これでもうギターは買えません。(←買う必要無いだろう!!!)


でも、今年も色々とギターを買いましたあ!!!

5月

アントニオ・ラゴス(Antonio Lagos) 1985年


アルゼンチンの激渋ギター
クラシックよりもフォルクローレやタンゴが似合いそうなギターです。



楕円形のサウンドホール
見た目はシノポリモデルっぽいですが、弾き心地は別物。
無骨で大らかなな筋肉質ギターです。



裏板の材質は不明
イナゴ豆かなあ???
味わい深いです。

地獄の底から湧き出す様な重低音と太く柔らかい高音。
反応は鈍く重たい。
造作は雑で無骨でひたすら味がある。
ネックは丸太????
でも弾き辛くは無い。

お風呂上がりに鶏カラつまみにビール飲みながら弾く専用ギターが欲しい!!!
と思って手に入れたギターです。



弾きたくなったらすぐに手に取れる様に、食卓の脇にぶら下がっています。



6月


ピカソ
Masashi Takata 2021 - No.046Picasso


世の中にはとんでもなく変な物を真剣に作ってしまう人がいるものです。



ピカソの描いた絵画「老いたギター弾き」の中のギターをそのまんま再現して作られたギターです。

形状はピカソの描いたギターを忠実に再現して歪に作られています。
楽器としては19世紀末のスパニッシュギターの仕様で誠実に作られています。
弾き心地と音色、響きは世紀末スパニッシュそのものです。
生漆での仕上げが美しい!!!!





7月

2年間止らずに動き続けてくれた心臓へのお礼です。
私の心臓はギターを欲してはいない?
夜中に酔っ払ってネットで見ているうちに、楽しくなってきてポチっとしてしまいましたあ!!!
アホですな。


エンシケ・サンフェリュー・ジュニア(Enrique Sanfeliu Junior )1939年


粗大ゴミ???
ゴミ捨て場に置いといても誰も拾わない位汚い!!!!
だが!!色合いがダークで味わい深い。


エンリケ・ガルシアの外弟子エンリケ・サンフェリューの息子の作ったギター。
バルセロナのオールド・スパニッシュ。


エミリオ・パスカルを手放してから、手元に無かったオールド・スパニッシュですが、手頃なのが1台欲しくてポチっとしてしまいました。



裏も汚い!!!




口輪も色合いがダークで思いのほか味があって良いですねえ。




ヘッドもひたすら地味で良い。




お父さんと同じラベルに小さくJunior の文字
渋いなあ。。。。




糸巻きは空回り寸前だったので、フステロのエステソモデルに交換。
フステロは美しい!!!
操作性も良いです。
ロジャースの様なスムーズさはありませんが、余計な遊びも無く、しっかりと回ってピタっと止ります。




力木はなんと3本ファンブレーシング!!!!
1930年代のニューコンセプト???



たった3本の力木でオールドと思えない位に豪快に力強く鳴っています。
1939年製なので、コンサートホール向きのギターに移行中だったのかも?
反応もオールドっぽい気難しさが無く、素直で大らかです。
弾いていて心地良いです。


10月

自分への還暦祝い?

ホワン・ミゲル・ゴンザレス(Juan Miguel Gonzalez)2017
トーレスレプリカ


買う気は無かった、、、、
サンフェリュー買ったばっかりだったし。

でも委託していたバルベロ・イーホと長沢仁美の2台が売れて、お金が出来てしまった。
駄目元で「売れた2台の代金までまけて」って聞いたらあっさりOK。
新たな出費ゼロで手に入れました!!!




口輪が美しい!!!




裏板の3枚継ぎも美しい!!



糸巻きはフステロの「7.TORRES ESPECIAL」
美しくそして操作性が良い。
正直ゴトーなんかよりスムーズで使い心地が良いですねえ。
フステロの最終型糸巻きは素晴らしい。

弾き心地と音色・響きはほとんどオールド・スパニッシュ。
高音の響きが美しい。
新しいギターなので機能的には現代のコンサートギターです。
趣味性と実用性が高いレベルで両立している理想的なギターです。






そして10月末

もうこれ以上はギターは要らない。
だいたい無職・無収入でギターなんて買えない。

委託していたギターがさらに2台売れて気が大きくなった?
また夜中酔っ払っていて楽しくなってしまってポチっとした。



ミゲル・シンプリシオ(Miguel S.Simplicio Sobrino de Francisco Simplicio)1969年


定年まで勤めあげた自分へのご褒美です!!!!(←説得力無し)
酔っ払ってポチっとしてから12日後にドイツから到着です。


20世紀初頭、バルセロナの名工フランシスコ・シンプリシオの甥ミゲル・S.シンプリシオが作ったギターです。
F.シンプリシオの工房で一緒にギターを作っていた息子のミゲル・シンプリシオとは別人です。




センターの割れ修理跡が悲惨です。
全体的にビカビカに再塗装されてしまっています。




裏もビカビカです。




口輪が美しい!!!!




鮑????
色合いが落ち着いていてこれも悪く無いかな?




20世紀初頭のF.シンプリシオへのオマージュ?
これはこれで悪く無いです。
目立つしね。




糸巻きはゴトーの廉価品が付いていたので、奮発してロジャースに交換!!!
ロジャースは本当に美しい。
近くで見て美しいのはフステロ、遠目で見て美しいのはロジャースです。

ゴトーからロジャースに交換したら、楽器の反応も鳴りも音も激変しましたあ!!
ロジャース恐るべし。




ラベルには誇らしげに「Sobrino de Francisco Simplicio」の文字
サインの文字デザインがセンス良いですねえ。




オリジナルの専用ケース内には「Miguel S.Simplicio」のエンブレム
格好良い。




内部構造
まったくシンプリシオで無い!!!!
60年代のニューコンセプト?

同時代のラミレス3世やフレタに対抗して、パワーを求めてギターは大型化し重くなっていったんでしょうねえ。

しかし、、、裏板のエンドブロック辺りに写っている白い物は何????
蛾の繭?
修理した時に取り忘れた綿???
バルセロナで流行った何かの呪いの儀式の跡????
何だか不気味なんですけど。
サウンドホールから小さなハタキを突っ込んでパタパタしたけど取れないですう。
昔、ブエノスアイレスから取り寄せたヌニェス1世の中から、巨大なスズメバチの死骸が出てきた事はあったなあ、、、、


弾き心地はF.シンプリシオとは方向性の違うギターです。
70年代スパニッシュです。



日本に到着したばかりで鳴っていない状態の時の音です。
反応もガチガチで苦労して弾いています。
修理・調整をして弾き込むと大化けしそうな感触がします。

ミゲル・シンプリシオは現在山本さんの工房で修理・調整中です。
完成は早くて来年の1月末頃。


結局は、ギターを買っただけのアホな1年でしたあ!!!!

久しぶりに指の状態のお話です。

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気がついたら年が明けてから時間がずいぶんと経過しています。
もう2月です。
いつもでもブログ放置していると、「とうとう死んだのか?」と思われる方もいるので久しぶりの更新です。

お久しぶりに指の状態のお話です。

既に何回かこのブログには書いていますが、現在はジストニアの症状はほとんど出なくなっています。
ジストニアが回復した経緯は、、、、

心臓が止って一度死んだ→すぐに生き返った→1ヶ月以上の入院生活→無事退院→ギターを初めて触った人みたいに弾けなくなっていた→練習をして少し弾ける様になってきたらジストニアの症状が出なくなっていたあ!!!

今でも疲れが溜まったり体調が悪くなると、その時だけはジストニアの症状が出る事はありますが、体調が回復するとジストニアの症状も出なくなります。

残念な事にジストニアの症状が出なくなったからと言って、普通にギターが弾ける様になった訳ではありません。
指はあいかわらず思う様には動いてくれません。
ジストニアの後遺症と病気で失った筋力が回復していない事が原因だと思います。
ギターの弦を弾こうとすると体の筋肉が硬直して指が動きません。
指の動きがコントロールが出来ません。
右の人差し指と薬指(ジストニアの症状巻き込みが起きていた指です)が動かないのですが、人差し指が特に酷くアルペジオ、スケール、トレモロがほとんど弾けません。

普通にギターを弾ける様になるために、今取り組んでいる事は、、、、

指が元気だった30代始めの頃(指を壊す直前)と同じタッチでギターを弾く

具体的には弦を弾く時に右の指先を袖口に放り込む様な感覚で弾きます。
動きとしては握る時の動作が基本ですが、スーとゆっくりと動かすのでは無く、指先を弦にプラントしてからポーンと袖口に放り込む様なつもりで弦を弾きます。

これは現代的な弾き方では無く20世紀後半的な弾き方かも知れません。
この弾き方はJ.W.デュアルテの公開レッスンで教わりました。
デュアルテ曰く「ジョン・ウィリアムスもその他の一流のギタリストもみんなやっている」との事です。
ジョン・ウィリアムスが本当にやっているかどうかは定かではありません。
やってみると早く弾くのに不向きかも知れませんが、太く心地良い音がでるので公開レッスン以降はこの弾き方に変えていました。

ジストニアの症状が出なくなったので、昔の様に弾ける様になればと思ってトライ中です。

最近になって基礎練習も復活させています。

指が動かない状態での基礎練習は体に掛かる負担が大きく、あまり良い結果に繋がっていなかったので止めていました。
右手のタッチを変えてから少し指も動く様になってきたので、アルペジオとスケールを練習の始めに30~40分程度やっています。
体の筋肉のが硬直していない状態でギターを弾く練習です。
良い状態でギターを弾いている感覚を脳に覚え込ませるのが目的です。

アポヤンドでのスケールはほとんど指が動かない!!!
ゆっくりやっても駄目ですなあ。
駄目なものを繰り返すと良い結果にならないので、いつも早々に切り上げます。

アルペジオはひたすらゆっくりと指の動きを確認しながらいくつかのパターンで弾きます。
ここまでは良いのです。
その後メトロノームに合わせてまた数パターン。
これがゆっくり弾いても意志通りに指が動いてくれない。
メトロノームのカチカチに合わせると体のあちらこちらの筋肉が硬直して人差し指が動かなくなります。
ひたすら体を硬直させない事を意識しながら練習します。


こんな事もやっています。
人前演奏や広い空間での演奏機会を出来るだけ多くしてもいます。

自分の耳に聞こえる音がいつも部屋で練習している時と違うと脳が混乱して体が硬直します。
どんな音が聞こえても指先の感触を頼りにいつも通り弾く練習になります。

少しづつですが効果は出ている気がします。


弾くギターによって指の動きが悪くなったりします。

弦の腰の強すぎるギターは駄目です。
弱すぎて右指の抜けの悪いギターは駄目です。
弦高が高いのも当然駄目。
鳴りの悪いのも駄目。
反応が遅いのも駄目。
反応がトリッキーなのも駄目。
音色の心地良いギターで無いと駄目。
響きが豊かで無いと駄目。
音の粒立ちが悪いと駄目。
一弦の音に金属的な成分が入ると駄目。
音が歪んだり暴れるのも当然駄目。


中々思った様なギターに出会えない。
良いと思って手に入れても、しばらく弾いていると色々と問題が出てきて指が動かなくなります。



年末の深夜、私は酔っ払っていました。
酒で脳みそが淀んだまんまヤフオクを見ていたら、イタリアの良さげなギターが、、、、



裏板なんてウォールナットでっせ!!!
Youtubeなんかで演奏動画見ても良さげなギターです。


年の初め、、、
イタリアのギターが届きました。
酔っ払いの国に住むもう一人の私からのお年始に違いありません!!!!
何故か落札代金は私の口座から引き落とされます。

弾いてみたら予想と違いムッチャ現代的なギターです。

でもこりはこりで良いギターですなあ。
腰が柔らかくて鳴りが良い!!!
使えるギターです。


年始の深夜酔っ払ってヤフオク見ていたら、なんだか良さげな邦人製作家のギターが出品されていました。
某ギター試奏ブログで絶賛さえていたギターですなあ。



表面板の色合いがムチャクチャ良いですねえ。



しばらくしたらもう1台ギターが家に到着です。

酔っ払いの国に住むもう一人の私からのお年玉に違いありません!!!!
何故か落札代金は私の口座から引き落とされます。
失業手当が出てるから良いか。。。。(←良くない良くない!!!)

弾いてみたら、、、
思いのほか本格派のギターです。
もっと「これぞ日本の伝統ぎたあら!!!」みたいなお気楽なギターかと思っていた。。。
こちらはあまりしっかりとしたタッチで弾かれていなかったのかまだ鳴りきっていません。
ppからmp位までの音は簡単に綺麗に響きますが、mf以上の音を出そうとすると音が歪みがちで結構難しい。
弦をしっかりと押し込まないと楽器が鳴りません。
頑張って弾き込んでffが素直に出る様になると、かなり良い感じのギターになりそうです。
糸巻きが安物に交換されているのも音に影響している気がします。
交換しちゃおうかなあ???


真面目にジストニアのお話の予定が結局ギター買った話で終わってしまいます。
アホは一度位死んでも治らないのです。
むしろ進行している????




イタリアンな物は良いのが多いのです

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過去に所有していたイタリアンなギターは2台あります。

アンドレア・タッキのブーシェオマージュ
ルカ・ワルドナーのトーレスモデル

どちらも素晴らしいギターでした。
もの凄く強烈な個性のギターでした。
弾きこなせずに手放しています。

2台のイタリアンに共通していたのは、音楽を感じる音色。
単音をポ~~ンって出しただけで音楽を感じてしまう様な音色です。

それからどちらも古い時代のギターの魅力と現代のコンサートギターの性能を併せ持っていました。

イタリアのギターは良いですねえ。
エンリコ・ボッテーリやパオロ・コリアーにも同じ魅力を感じたりします。


イタリアンなギターが1台欲しいかなあ???
タッキやワルドナーよりも少しあっさりとした音のギターで気軽に弾ける物、それで響きが豊富なのが欲しいです。


年末に酔っ払ってヤフオクみてたら、何となくピンっと来るギターがありました。

イタリアの現代のギターです。
2012年製で出品者の方は関西の若手ギタリスト予備軍っぽい方。
十分に弾き込まれているはずです。
YouTubeで演奏されている動画も確認。
音色は良く分からないけれども良いギターなのは間違い無い!!!!

酔っ払っていましたからねえ。
自制心とか理性とかは残っていません。
ポチっとしてしまいましたあ!!


落札価格はそれなりに高価です。
楽器屋さんで買う事を思えばかなり安いかなあ??




さすがイタリアンなギターです。
ビジュアルが良いです。
塗膜はたぶんラッカー
シェラックよりもあっさりした音が出る楽器が多いです。




アンジェラ・ヴァイラティ
ラベルのセンスがむっちゃ良いです。
これだけでも良い音が出る事が想像できます。




口輪も美しいです。




ポチってしまった一番の原因。
裏・側板はウォールナットです。
ウォールナットのギターは反応が早くて軽やかで、弾き心地の良いギターが多いんですよねえ。
ローズウッド系で無くあえてウォールナットを選んでいるのは、軽やかな反応のギターを作る意図があったのではと想像したりします。




どうみてもゴトーの廉価版の糸巻きに見えますが、実際はオランダのヴァンゲントだそうです。
ヨーロッパで中古のギターを売りに出す時に高価な糸巻きを外して取り付ける定番の安物糸巻きです。
以前手に入れたマーチン・フリーソンにも同じ物が付いていました。
元々はアレッシーが付いていたはずです。


年明け早々に手元に到着です。
さっそく弾いてみると。。。。

すっげー現代的なギターです。
高音がカチカチの音です。
低音はパワフルにドカンドカン鳴ります。
上から下まで弱点が無く全ての音が大音量で鳴りまくります。
音の密度はあまり高くない。




内部構造は5本平行ブレーシングに直交する駒下のトラベルスバー?1本のみ
音の密度が少し低く感じるのはこのブレーシングのせいかなあ?

想像していたのとじぇんじぇん違う。。。。。

弦をクロロカーボンからナイロン弦に張り替えて、1ヶ月弾いていたら音色がソフトに変わって来ました。
反応も穏やかになって弾き心地も良くなりました。
軽く弦を弾くだけでしっかりと音が出てくれるので弾きやすい。
音の密度が低いのは、パワーと響きでカバー出来ています。
なんだか少しづつ好みのギターに変化してきています。


かなり良い実用的なギターです。
色々な意味で気楽に弾けるギターですね。
音量も響きもあるのでデッドな空間で弾く時にも良さそうです。


アンジェラ・ヴァイラティは月曜日に山本さんの工房に預けて、全体チェックと糸巻きの交換と弦高調整をお願いしてきます。
糸巻きは最初に付いていたはずのアレッシーにします。

これで音が引き締まって反応がさらに良くなるのでは期待しています。
楽しみです!!!

日本のギター製作家は指物師でしかない??

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ずいぶんと前ですが、ロマニリョスの講習会に参加した事が売り?の中堅製作家から言われた事があります。

日本人の今までのギター製作家がどうして駄目か分かる?
指物師が形だけのギターを作っているからなんだよ。

言い回しは正確には覚えていませんが、自分とその仲間の若手製作家はロマニリョスの講習会に参加しているから本物で、日本の先人達はスペインの伝統的なギター製作を知らず指物師の技術で作ってるから楽器として駄目って言いたいらしいのですが、、、
昭和の初期の頃の話ならばともかくねえ、これ言われたのは平成も終わろうとしている頃なんですよねえ。。。

これを聞いて以降、「ロマニリョスの講習会に参加を売り」にしている製作家は楽器も信用出来ないと思う様になってしまっています。
ロマニリョスの講習会に参加していても、素晴らしいギターを作っている方もいらしゃいますが、、、、

昔ながらの邦人製作家のギターって弾きやすいのが多いんですよねえ。
簡単に心地良い音が出る。
特に昭和から作っていらっしゃる方のギターは音色に独特の湿気と艶があって、これが魅力になっているギターが多いって印象です。
年式の比較的新しいギターであれば、音質や音量にも実用上問題無いし低音の重量感もあるギターが多いですしねえ。

簡単に音がでて音色が日本的な湿っぽい艶を感じる様な邦人製作家のギターが1本欲しい!!!


邦人製作家のギターは3台(1台は在フランスなのでフランス製???)ありますが、どれもカッ飛んだ個性のギターで古き良き時代の日本のギターの面影はありません。


某ギター試奏ブログを書いていらっしゃる方が最近邦人製作家にギターをオーダーしています。
この方は楽器屋さんを除けばたぶん日本で一番多くのギターを試奏しています。
ブログを読んでいると、この邦人製作家のギターが欲しくなってしまいます。

野辺雅史さん

祖父は指物師の技術でギターの製作
お父さんの野辺正二氏は昭和の時代から日本を代表する製作家
まさに古き良き時代から続く日本の製作家の家系

お父さんの野辺正二さんのギターを弾いている知り合いがいます。
音の密度が濃いギター
残響過多のホールでも、コロナ対策で窓開けている騒音だらめの音楽室でもしっかりと音が聞こえてきます。
低音の重量感もあります。
でも高音に色艶はあまり無いかなあ?


若い野辺雅史さんんが作るギターならば、野辺ギターの良さはそのままに音に色気が出ているのでは???
でも楽器屋さんに野辺雅史さんのギターが置いてある事は無いんですよねえ。
完全にオーダー受注製作で製作本数も少ないから、、、
良いギターなので手にした方も手放さないのでしょうねえ。。。
どんなギターか弾いてみたい!!!


正月も明けた頃
酒で脳の濁った深夜です。
ヤフオク見ていたら、なんと野辺雅史さんのギターが出品されています。
製作は10年位前です。

値段はムッチャ高い強気の設定。

この価格ならばもう少し出して新品オーダーした方が絶対に良い。
でももう歳だからねえ、、、
これから新品のギター手に入れて鳴るまで弾き込むのも無理です。
今後も弾き込みが必要なギターが家に溢れてるし。。。。
10年経っていればちょうど良い感じに弾き込まれていそうだしねえ。

手が滑った?
ポチっとしました。

そして2週間位前にギターが到着です。
アホですな。




地味で古風な見た目が素晴らしい!!!!
ピッカピカの仕上げのギターだったら絶対にポチっとしなかった。




表面板の色が濃淡が出ていて良い味わいです。
良いですねえ。
材質は何だろう?
ジャーマンスプルースって説明文に書いてあったけど、何となくエゾマツっぽい気もする。




口輪のデザインも素晴らしい!!!




裏板はローズウッド系
良い柾目です。
昔の良いギターのローズウッドはこんな柾目が普通でした。
この見た目だけで楽器の素直な反応が想像出来ます。




2012年製でシリアルNo.122
ラベルは昭和ですなあ、、、
若い人のセンスでデザイン変えても良いのではなんて勝手に思います。
でも伝統も大事ですしね、、、




糸巻きはヤマハに交換されてしまっています。
元の糸巻きはヤフオク出品時に外して別々に出品されていました。
これは交換ですね。
どの糸巻き付けようかなあ???


さっそく弾いてみます。

あれ????
想像してたのとまったく違う。
じぇんじぇん弾きやすく無い。
弦の感触は腰が強い本格派のギターです。

鳴りも普通ですねえ。
低音も期待していた様な重量感は無く普通です。
高音はキンキンした金属音が混じります。
期待していた様な湿気った艶っぽさもあまり無い。

良いギターだけど特別ではない普通の日本のギターです。


ポッチったのは失敗かなあ?

楽器屋さんに委託販売にだしちゃおうか?
なんて思いながら弾いていたら3日後位には1弦の金属音が消えて美しい音色に変化。
毎日変化し続けています。

2週間で好みのギターに変わりつつあります。
反応が良くなって弾きやすくなっています。
高音は上品な心地良い音になり色気が出始めました。
低音はパワーが出てきて重量感も増しています。

普通のギターに感じたのは楽器が眠っていただけでした。
まだまだ覚醒していないので、これからどれだけ変わっていくか楽しみなギターです。

しかし、、、
糸巻きどうしようかなあ?
フレドリッシュに付けてあるゴトーを取付ようかと思っていたのですが、このギターには似合わないし鳴りにも良い影響は期待出来ないです。
このギターならばシェラーが似合いそうですが、高いんですよねえ。。。
フレドリッシュに付けるつもりでポチったシェラー付けちゃおうかなあ????
それでフレドリッシュ用にはロジャースを注文しちゃおうかなあ???
悩むなあ。。。


シンプリシオ帰還

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フランシスコでないし息子でも無いシンプリシオ!!
ミゲル ・シンプリシオがようやっと修理から戻って来ましたあ!!!!



12月の初めに山本さんの工房に預けてから2ヶ月掛かっています。
あんまり戻って来ないから、その間で2台もギターが増えてしまった。。。。。(←理由になっていない??)

一番の大改修部が



歪に大きく開けられてしまったヘッドの軸穴
ヘッドが崩壊寸前でした。





ぴったりと美しく埋められています。
山本さんお見事です!!!

後はサドルの作り直しと



内部にくっついていた不気味な綿の撤去

修理跡に付いている白いパテ



これも取ってもらいました。




以前よりはずいぶんとコギレイになりました。
これ以上は仕方が無いので味わいであると思う事にします。


修理から戻って来たミゲル・シンプリシオを久しぶりに弾いてみると、、、

大化けしたああああああああああああ!!!!!!
まだ寝ボケた状態のはずなのにバコンバコン鳴っています。
スムーズに音が出て弾きやすい。
音が暴れたり歪んだりせず安定して良い音が出てくれます。
音の芯が出ています。
密度も十分。
音色も心地良いです。

これで本格的に覚醒したらどうなってしまうのかなあ???


音色の美しさだけで言えば、フレドリッシュやミゲル・ゴンザレスの方が強烈に美しい音です。
でも今の指の状態で曲を弾いた時に出る音ならば、ミゲル・シンプリシオの方が安定して良い音が出せます。
これ以上覚醒して気まぐれな反応にならないで欲しいですねえ、、、、


そんな訳で、しばらくの間メインギターはミゲル・シンプリシオに決定です。

糸巻き交換と調整の終わった後のヴァイラティ
弾き込んで覚醒した後の野辺さんのギター(野辺さんのギターも安定していますからねえ。)
この2台も期待大です。

骨伝導スピーカー

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骨伝導スピーカーに頑張ってお仕事してもらっています。

ミゲル・シンプリシオはまだ高音のハイポジションの鳴りが渋いです。
もっと弾き込まないと鳴ってくれません。

他にも弾き込みが必要なギターが沢山あります。
野辺、川田、山本、ゴンザレス、、、
サンフェリューあたりもまだ完全には目覚めていないしねえ、、、

中々弾き込み作業は進みません。

そこで骨伝導スピーカーに働いてもらう事にしました。

骨伝導スピーカーをギターの表面板に貼り付けて、ギターを鳴らしています。



実験ですね。
これで鳴りが良くなってくれたらラッキーです。
CDも聞けるしで一石二鳥です。

マシンを交換

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イタリア製とドイツ製のマシンへ交換しました。

ギターの糸巻きを交換したのですが、、、
やっぱり音が変わりますねえ。
高級糸巻きは値段が高いだけの事はあります。


まずは



イタリアンのアンジェロ・ヴァイラティ



見た目は味わい深いですが、ガタガタの廉価品
オランダのヴァンゲントが付いていましたが、、、、



元々付いていたはずのイタリアのアレッシーに交換です。
アレッシーのプレーンタイプはお値段はそれ程高くありませんが、材質感が良い高品質な糸巻きです。
作業は山本さんにお願いしました。
音に大きな影響が出る箇所なので、高級糸巻きへの交換は必ずプロにお願いします。
一緒にサドルも山本さんに作り直してもらっています。


音が変わりました。
楽器の反応が素直になり、発音がよりスムーズになっています。
ピアニシモの音が簡単に出る様になったので、力を抜いたタッチで音が出ます。
結果として音色・音質が向上します。
響きも豊かになっています。
現代的で硬質だった音質が太くソフトで心地良い音に変わっています。
右手のタッチにリニアに反応して鳴ってくれるので弾きやすいです。


これだけ楽器が激変する頃を考えれば、高級糸巻きへの交換は安い出費です。



もう1台



野辺雅史さんのエゾマツギター





ゴトーを超える驚異的に貧相なビジュアル!!!
ヤマハのマシンに交換されてしまっています。
操作性は普通です。
普通に回って普通に調弦出来ます。


こちらはドイツ製の超高級マシン



シェラーへ交換です。
真鍮プレーンタイプで水牛ローラー
材質感がとてつもなく良い!!!
デザインはアレッシーに比べるとやや無骨な機能美。
車に例えるとアレッシーがアルファロメオならば、シェラーはポルシェですかねえ?



交換作業は野辺さんにお願いしました。
プロの仕事はやっぱり素晴らしい!!!
過去の酷すぎる素人作業でビス穴跡に埋め込まれた物を除去し、マホガニーでピッタリと埋めた後に塗装してもらいました。
これで将来、ヘッドの割れ等のトラブルを防げます。
サドルとナットの作り直しも一緒にお願いしました。




野辺さんのエゾマツギターにはシェラーが似合います。

変わり方はアレッシー以上ですねえ。
アレッシーの時と同じ変化が、シェラーだとさらにひとランク上に変わる印象です。
反応がひたすら素直になっています。
簡単に良い音が出ます。
音色の心地よさがアップしています。
力強い鳴りもアップしています。
余韻の響きが良いですねえ。
弦の感触は強靱なのに心地良い!!!
野辺ギターの本来の良さを簡単に引き出せる様になった感じですかねえ。


シェラーのマシンは今回初めてでしたが、ロジャースと比べてもまったく遜色ありません。
ロジャースの方が少しだけ使い心地が良いかなあ?
スムースなだけで無く、ボタンの感触や回すときの筋肉の感触が心地良い。
調弦が快楽に変わる????
シェラーとロジャースはその程度の差ですから、デザインの好みで選んで良い程度の差です。
アレッシーのプレーンタイプはシェラーやロジャースには少しだけ劣りますが、コストパフォーマンスが最高のマシンですかねえ???

今回は山本さんと野辺さんにそれぞれサドルも製作していただいているので、音の変化はその影響もかなり大きいとは思います。
マシンとサドルは本当に大事だなあとあらためて思いました。

世の中にはブーシェの名をモデルにしたギターがかなりありますが、、、

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正直に思った事を書くと、、、

世の中にはブーシェの名をモデルにしたギターが、かなりありますが、、、
「このギターにブーシェの名前使ったら、ブーシェに失礼だろう!!!」
などと思ってしまうギターがほとんどです。
たまにブーシェっぽい鳴り方の様な気がするギターもありますが、ブーシェとの差は「カニ」と「カニカマ」以上です。
「キャビア」と「とんぶり」位にかけ離れています!!!
ブーシェに対する尊敬の気持ちが感じられない。

タッキさんのブーシェオマージュは良いのです。
オマージュですから。

川田一高さんのプレスティシリーズも良いのです。
ブーシェの名前を使っていませんし、そもそもブーシェ風のギターを意図していないのですから。

「トーレス」や「ハウザー」の名前をモデルに使ったギターも沢山ありますが、これらもほとんど「何処が?」って思ってしまうギターですが、何故か気にはなりません。
シンプリシオモデルとかサントスモデルとかも気になりません。
私にとってブーシェは、特別に独特な魅力に満ちたギターだからかなあ???


ここまでの前置きは、以降の本編?とは、ほとんど関係無いのですが、、、

話は変わりますが、黒田義正さんの少し前までのラベルはブーシェ風です。
これはパロディ?って思う位に洒落っぽく似せてあります。
唐草模様なんて、部分的にはまったく一緒だったりします。
これは「分かる人には分かる」洒落っぽいラベルなので良いのです。

そんな訳で??黒田義正さんのギターが1台、新たに家へやってきました。。。(←???)




見た目は新しいギターに見えますが、2003年製作の20年近く経ったギターです。
弦長は635mmでボディも小ぶりなギターです。
構えた時の感触はオールドスパニッシュに近い。




表面板はスプルース、裏・側板はローズウッドの標準的なギターです。




ラベルはブーシェパロディの横貼り?
オサレです。




口輪は新しさと古さの合わさった黒田さんらしい良いデザイン




黒田さんにしては珍しいダブルホールのブリッジ




糸巻きはゴトーの中級品
これはすぐに交換ですね。





ほとんど弾きキズの無い美しい表面板!!
全体的にキズが見当たらない良い状態です。

前オーナーは超名器を数台所有していた高齢の有名コレクターでしたので、ほとんど弾かれずにデッドストック状態だったのかも知れません。


内部構造は、、、



お~~~!!!
普通のファンブレーシングで無いいいいいいいいい!!!

7本の平行ブレーシング
2本の逆ハの字のクロージングバー
そして波形のトランスヴァースバー

黒田さんのブーシェオマージュ的ニューコンセプトギターですなこりは。。。。


音色は黒田さんらしい木質系の心地良い柔らかい音。
高音は少し複雑な音かな?
数種類の色が含まれているような音。
適度な透明感もあります。
音の芯がしっかりとしてます。
低音は適度な重量感と躍動感。
6弦の開放弦がド~ンと来るのは、ブーシェよりもシンプリシオっぽいかも?
音色の変化も付けやすい。
響きがあって気持ち良い。
反応は早くて、その後にも音が立ち上がってくる。
音量も十分にあってピアニシモも簡単に出てくれるのでダイナミックレンジが大きい。
弾き心地がひたすら良い。
弦はひたすら柔らかい。
でもしっかりとした腰で強めのタッチにも反応してくれます。

自分にとって一つの理想型のギターです。(←もちろん別パターンの理想型のギターもありますが、、、)
右指に掛かる負担がほとんど無いので、筋力の衰えた今の状態でも普通に弾けてしまいます。
パワーとスピードは衰えたままですが、曲によっては指が元気だった20代の頃と同じ様に弾けてしまいます。


このタイミングでまさかこんなギターに出会えるとは、、、
しかもムッチャお買い得価格だった。


小さな世紀末スパニッシュギター

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もう7月になってしまったのですねえ。
前回のブログから2ヶ月以上放置状態が続いてしまいました。
まだ生きています。




委託販売に出していた楽器が売れたので、代わりに小さな世紀末スパニッシュギターが家にやって来ました。
弦長610mmのギターです。
ひたすら心地の良いギター。
夜中に酒飲んで酔っ払って弾くとたまらなく良いギターです。




J.M.リョベート

購入時は正体不明でしたが、ネットで色々と調べているうちに正体が少し分かって来ました。
古いギターを手に入れると、この追跡作業の楽しみもあって良いのです。


J.M.リョベートはタレガの弟子のリョベートとは関係ありません。
18世紀末から20世紀の初頭にバルセロナのcanaletas通りで営業していた楽器商です。
ギター、バンドーリアの製造販売と楽譜の出版、ヴァイオリン等の販売と手広く商売をしていた様子です。
J.M.リョベートさんの死後も奥さんが会社を引き継いで営業していました。
ラベルには製作年等は書かれていませんが、1905年のJ.M.リョベート社の出版した楽譜には版元「Viuda de J. M. Llobet」(J.M.リョベートの未亡人)と記されていますので、このギターは19世紀末~1904年に作られたギターのようです。
実際の製作家は不明です。


今まで数台弾いた(所有した)19世紀末のスパニッシュギターとはかなりテイストの違うギターです。
鳴りが良くて響きが豊かです。
音質がしっかりしていて音色はやや暗い魅力があります。
弾き心地は世紀末スパニッシュですが、音の傾向はもう少し後のエミリオ・パスカルやエンリケ・サンフェリューに近いかも?
かなり好きなタイプのギターです。





ロゼッタがひたすら美しい。
色彩あふれるコテコテのド派手装飾と違いセンスが良いです。
この辺りにもバルセロナっぽさを感じます。
実際はバレンシアで作られたギターにJ.M.リョベートのラベルを貼って販売された可能性もありますが、、、





ヘッドの装飾も手が込んでいますが、コテコテ装飾とは違います。
糸巻きはオリジナルでは無さそうです。
古い時代にパーラーギター用の物に交換されている気がします。
使い勝手は良いです。





指板の脇にも鯨のヒゲの縁取り。
手間暇掛けて作っていますねえ。。。。





裏板は良い感じのシープレス




細かい所まで手の込んだ装飾が入っています。


19世紀末のギターですので、現代の楽器の感覚で言えば状態は決して良くはありません。
表面板その他の割れ修理跡は当たり前です。
表面板は波打ってます。
その為に元々斜めになるように付いているサドルがさらにお辞儀をしています。

現状は細い弦を張ってピッチを440Hzで調弦するとローポジションでビビります。
ネックが少し逆反りしていますが、フレットは現在使われている物と寸法が違いますし、鯨のヒゲの縁取りを痛めたく無いので、大きな修理はしたくありません。
こういう楽器は最低限の修理・調整で付き合っていくのが正解だと思います。
コンサートギターでは無いですしね。

今回は山本さんにサドルを作製して弦高調整と糸巻きの付け直し(取付ビスが空回りしている)のみをお願いしてあります。
ビビりが治まりきらなかった時は太い弦を張ってピッチを下げて対応予定です。


気楽に使える古い時代の物はやっぱり良いですねえ。
酔っ払うと必ず弾きたくなる。。。。。

J.M.リョベート再追跡

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ヤフオクに出品されているギターを見ているうちに面白い物を見つけました。



ヤフオク出品ギターの内部に貼られた販売店のラベルには

「I.LLOBET Y Cia.,S.C.」

とあります。
住所もバルセロナのランブラ通りです。


家にやってきた小さな世紀末スパニッシュギター
J.M.リョベートのラベル




リョベートギターを製造・販売した楽器屋さんは代替わりしながら現在も営業していてギターを売っているって事です!!

HPも見つけました。

https://rutadelsemblematics.cat/barcelona-musical-emporium.html?fbclid=IwAR2v8-Pb-pzGUU4f5AZDQaPhEYpAGh2I53wpWCJN_nF6FoRRDYAKfncsLrc




激渋なお店です。


HPを見ているうちに思い出しました。
この楽器屋さん行った事があります。
今から20年位前にスペイン旅行へ行った時に、何か面白い楽器か楽譜があれば買おうと思って、この楽器屋さんへ行っています。
在庫は普通の町の楽器屋さんといった感じで、特に面白い物はありませんでした。

ミゲル・リョベートの紹介冊子みたいな物を見つけて買いましたが、何故か店主のおじさんは大喜びしていました。
そういえばミゲル・リョベートもバルセロナ出身ですし、J.M.リョベート、I.リョベートと親戚の可能性もありますねえ。
これはもう少し調べてみたいかも。


20年前に旅行中に寄ったバルセロナの楽器屋さんの130年位前のギターを今になってから知らずに手にする!!!
オタクにとっては何だかロマンだよなあ。。。。


子供の頃の憧れ

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子供の頃の話です。
小学生から中学生くらいですかねえ?
憧れのギタリストはイエペスだけでした。
セゴビアもブリームもジョンもイエペス程には魅力を感じませんでした。

あの頃レコードで聞いた、イエペスのクリスタルトーンは本当に素晴らしかった。

とうぜん子供の頃の憧れの楽器はハウザーでもブーシェでもアグアドでも無くベルナベでした。
ベルナベは特別なギターです。
ベルナベは当時から非常に高価で、日本の楽器商が雑誌の対談で「ベルナベは強気で、値段をどんどん上げてくる。定価が高くなりすぎ」とぼやいていたっけ、、、

その後ベルナベは、新大久保の楽器屋さんが日本の総代理店になって、ラインナップを異常に増やして、最高級品は値段が歴史的名器並になって、2世になって、個性を失い普通に良いギターになってしまって、興味が無くなりました。

それでもCDで聞くあの頃のイエペスの音は素晴らしいし大好きです。

最近になって、指の状態が良くなってきて、子供の頃の憧れのギターのベルナベが弾いてみたくなりました。
最近の弾きやすくて高品質だけど個性の薄いベルナベでは無く、レコードでイエペスが弾いていたガチガチの70年代のベルナベです。

コチコチでパワフルで透明な音の70年代のベルナベ。
弾くのにも力が必要な体躯会系ギター。

新大久保の楽器屋さんで弾いてみました。



1977年のベルナベ。
イエペスの為に最初の10弦ギターを作ったのが1972年なので、まさにあの時代のベルナベです。

期待が大きすぎた?
良い音ではあるけど少しチープで大味な音。
期待していた様な高密度の音ではありません。

まあ当然か、、、、
イエペスのために作られた特別なギターと普通に作られたギターでは違って当然ですねえ。

それでも、ひたすら良く鳴って弾きやすい。
弦長は660mmでもほとんど気にならない。
音質は悪くないです。全ての音が明快に聞こえます。
音色は特別では無いけど分かりやすい良い音。
反応も大らかで神経質な所がまったくありません。
強くタッチすれば単純に大きな音が出ます。
音量は大・中・小の分かりやすい3段階変化。
音色の変化は固い→柔らかいの2段階。

扱いやすいギターです。
野辺ギターや山本さんの猫ギター、黒田モダンの様に繊細な所が無いし、フレドリッシュの様な気まぐれな所は微塵も無い!!
安定して音が出てくれるギターです。






何故だ????

今、77年のベルナベが家にあります。
アホだ、、、、、、





裏板はかなり良さげなハカランダです。





口輪もラーメンどんぶり模様が味わい深い!!!





このマシンは何???
ムッチャ渋いんですけど!!!
GGショップでは同じマシンをアレッシーって説明してますが、違いますよねえ?
新大久保の楽器屋さんではヴァンゲントでは?との事。
ヴァンゲントにしては操作性は悪くありません。


憧れていたイエペスの音は出ませんが、これはこれでありな実用性と趣味性を兼ね備えたギターです。





ハカランダの板を叩いた事ありますか?

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こんなハカランダを見て、叩いて音を出したりしたら、どうなる???




そりゃー欲しくなるじゃーないですかあ、、、
ほぼ柾目のハカランダ
叩くとコォ~~~~~~~ンって気持ち良い音がする。
古い良質なハカランダって叩くとこんなに気持ち良い音がするんだ、、、
知らなかった。


それで表面板はこれ





ビジュアルがムッチャ渋いよお!!!
エエですなあ。
何年寝かしたらスプルースの色がこんなに濃くなるんだろう?
素晴らしいなあ。


こんなハカランダやスプルースが何枚も出てきちゃう。
ある所にはあるんですねえ。


この素晴らしい材がギターになったら、いったいどんな音がするんだろう?


オーダーしちゃったのは2月27日

音のイメージを色で聞かれたり、どんなギターが好きか色々と話をしました。
弦長は640mm、ボディサイズはブーシェで、反応は早く、音は透明で冷たくて艶っぽく、美しい余韻を楽しむギター。
お願いしたのはこんな感じです。
ネックの形状とか、2ホールブリッジ、ポジションマークも確認されたかな?





ロジャースに注文してあったマカライトボタンのマシンが出来上がって来たので、取り付けてもらう事にしました。



完成の連絡があったのは7月半ば、ギターを取りに行けたのは7月25日。





野辺雅史さんに作っていただいたギターです。




ほとんどローズウッドにしか見えない地味な柾目のハカランダ
このハカランダならば、ローズウッドの様に素直な反応でハカランダらしい硬質な音のギターになるのでは?と思って選びました。




マカライトボタンはやっぱり違和感があったか、、、
そのうち見慣れるでしょう。
さすがロジャース!!操作性は抜群です。




口輪のデザインも落ち着いた良い物です。





表面板に浮き出した波模様
見るからに良い音が出そうです。






素晴らしいギターです。
こんなギターが出来上がってくれたらって思っていた通りのギターです。
理想のギターです。
重量を計ったら意外にも1.83kgもありました。

腰が強くて弦を押し込まずに弾いても良く鳴ってくれます。
密度の高い音がして、音の圧力も充分にあります。
低音は重く躍動感があって適度な響きもあります。
高音は太く透明で心地良く上品な色気があります。
上から下までどこにも弱点が無いです。
弾き心地が良くて楽器との一体感が感じられます。
弾いていてひたすら楽しい。
音量はかなりあると思います。
弱音も美しい。
腰が強いので強く弾いても音が歪まない安心感。

出来立てての状態でこれだけ戦闘能力が高いギターは、過去に弾いたギターではタッキくらいしか無いですねえ。
そしてタッキよりもかなり弾きやすい。


この素晴らしいギターが年数を経てどう成長していくのか楽しみです。
私が元気にギターを弾いていられるうちに、このギターが能力全開状態になってくれると良いなあ。

久しぶりにダルバート

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最近は外食の機会が減っています。

このブログも一時期は、「カレー食って太っていくだけ」の内容になっていましたが、今は外でカレーを食べる事もほとんど無くなっていますねえ。

外食が減って分かった事。
カレーは外で食っても家で食っても太る!!


久しぶりに上板橋ネパール料理屋さん「スルエシー」でダルバート食べましたあ!!!
洗練された味のネパール料理!!!
8年ぶりのスルエシーです。



生ビールとサービスおつまみの「ジャガイモと春雨のアチャール」
うみゃいなあ。




サービスおつまみだけでは足りないので、「ゴーヤのアチャール」を注文
インド料理店でアチャールを頼むと漬物(ピクルス?)っぽい物が出てきますが、ここではゴーヤのスパイス和っぽい料理が出てきます。
スパイスが効いていて強烈な味ですが、むっちゃうみゃいのです。
これだけでビールのジョッキが空になります。




メインのダルバート!!!
ご飯の廻りを取り囲んだおかずにダル(豆)スープを掛けて、グチャグチャと混ぜて混ぜて混ぜて食べます。
日本で言えば「味噌汁ぶっかけ飯」みたいな物???(←by木枯らし紋次郎)

バカうみゃあああああああ~~~~!!!!!

豆スープとおかずとご飯が適当に混ざり合って、食べる毎に味と食感が変わります。
こりは美味しくて楽しい!!!

スルエシーのダルバートは別格ですなあ。


近所にもダルバートを出すお店が欲しいなあ。
都内に出ないとダルバート食べられるお店は少ないしねえ。
たまに横浜でダルバートがメニューにあっても、ダルがスープじゃ無くてインド式のドロドロカレーでがっかりする事が多いんですよねえ。

フランシスコなフレタのギターのお話し

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バルセロナの60年代のギターが2台
フランシスコで無いシンプリシオとフランシスコなフレタ
2台のギターの弾き比べ

アホですな。

ミゲル・シンプリシオ 1969年
フランシスコ・シンプリシオの甥っ子のギター
某楽器屋さんに持ち込んで弾き比べをしてみました。


弾き比べたギターは、、、、
フランシスコ・マヌエル・フレタ 1964年
イグナシオ・フレタのお兄さんのギター
よくもまあこんな珍しいギターが日本にあったもんです。


世にもマニアックでアホな弾き比べです。


フランシスコ・フレタは弟のイグナシオ・フレタにギターの製作を教えた人との事です。
フレタ・ギターの原点???
存在があまり知られていないのは生涯製作本数が極端に少なかったから?
バイオリンの製作がメインでギターはあまり作っていなかったようです。

弾き比べの結果

弾き比べるまでもなかったあああああああああああ!!
同じ60年代のバルセロナのギターですが、共通点はほとんどありません。

1969年のミゲル・シンプリシオは60年代末のニューコンセプトなギターです。
大空間で演奏される事を想定した少し後の時代の70年代スパニッシュギターみたいな性格。
腰高の明るい音でバンバンと鳴ります。

フランシスコ・フレタはもっと古い時代のギター、まるで戦前のギターみたいな性格。
音色は暗く陰鬱で重たい。
ひたすら濃密な音。
反応がグナシオ・フレタよりも早いので扱いやすいです。

こりは痺れるなあ、、、、
シンプリシオとフレタ1世のいいとこ取りみたいなギター。


弦長670mm(実際は668mm位だと思います)と長いですが、ボディはそれ程大きく無く、ネックも細めなので弾き辛くはありません。
このとてつもない魅力に満ちたギターのフランシスコ・フレタが、お値段はなんとイグナシオ・フレタ1世の1/4位!!!
音を考えたら長い弦長の事を差し引いても超!超!!超!!!お買い得価格です。




そんな訳で、フランシスコ・フレタは家にやってきてしまいましたあ。
アホだなあ。。。。






あまり弾かれてきていないギターなのか、状態はかなり良いです。



表面板に割れ修理跡等はなさそうです。
塗装もオリジナルに近い状態です。
もしかしたら薄くお化粧直しで上塗りされているかも知れません。
音にはほとんど影響は無さそうです。




裏板は柾目のハカランダ?の4枚継。
見た目は地味ですがこういうのが良いのです。





特別では無いですが趣味の良いロゼッタ。




ブリッジには白蝶貝の装飾。
派手さは無いですが味わい深い。




ヘッドも普通です。
2本ラインだけです。




糸巻きはたぶんフステロ
オリジナルではなさそうですが、すでに軸が割れて空回りしています。
とりあえずエポキシで固めて応急措置してあります。
お店の人にはゴトーに交換すると言われましたが、そのままにしてもらいました。






以前注文しておいたロジャースに交換予定です!!!






ギター製作家の山本篤史さんにチェックしてもらいましたが、軸穴が歪んでいて2弦・5弦の穴の位置がずれているそうです。
軸間寸法も36mmなので一度穴を埋めて開け直してもらいます。
かなり神経を使う作業らしくて、山本さんは嫌がっていたなあ。




力木はボディぎりぎりまで延びた9本ファンブレーシングのみ。
現代の製作家の仕事に比べると、なんとも微笑ましく味わい深いお仕事です。
これであの濃密な音が出るからギターは不思議です。




フランシスコ・フレタは現在山本さんの工房で修理・調整中です。
完成はいつ頃かなあ???
ヘッドの軸穴の開け直しが、現状の歪で位置がずれた穴を出来るだけ削ずらずに埋めるので、かなり大変との事です。
たぶん10月末頃の完成かなあ?











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